『週報』

北野唯我のブログ。人材領域をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

組織における「秀才」の役割が、明らかに変わってきた。

 

※この記事は「凡人が天才を殺すことがある理由」の続編です 

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「大企業において、"進化を阻止するパワー”は、なにか」

 

ー最近、そればかりずっと考えている。その目的は、ある文章の続きを書くためです。

 

yuiga-k.hatenablog.com

  

通称「天才・秀才・凡人」と呼ばれるこの記事は公開すぐネット上で話題になった。観測している範囲だけで30万pv。ヤフーへの転載、SEOなど「計測できない分」も含めると、50万pv近くに及んだと思われるこの記事は(50万pvというのは「中規模ウェブメディアの1ヶ月分の数字」にあたる)、書籍化のオファーも複数社からきた。

 

そして最近、この話の「続き」を考えることが多い。その背景にあるのは僕自身が「秀才の価値」を痛感する機会が増えてきたからだ。具体的にはこうだ。

 

  今の時代、組織の命運は実は「秀才」が握っている

 

そう考えるようになったからだ。

 

・「天才の時代」と「秀才の時代」は、交互に訪れる

 

原文を読んでいない人もいると思うので、3者の関係をまず再掲したい。

 

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 出典:凡人が天才を殺すことがある理由 

 

これは天才と秀才と凡人の関係図をさしている。今回は「天才と秀才」の関係についてみたい。まず、秀才→天才は「妬みと憧れ」という、相反する感情(アンビバレントな感情)を持つ。一方で、天才→秀才は「興味がない」。

 

この理由は簡単だ。秀才は、天才の凄さがより正確に「分かってしまう」からだ。反対に天才は「秀才という人工的な存在」に本質的には興奮しないからである。そして普通の人は、天才の凄さを認識できない。そのため、凡人→天才はシンプルな感情しかもたない。それは「凄い」か「理解できないから排除する」の2つしかない。一方で秀才は違う。「自分とは、モノ(才能)が違う」という事実をいやがおうにも見せつけられる。根の深い部分では憧れを持つ。一方で、天才は本質的には自分には興味を持ってくれないことも知っている。そのため、相反する気持ちを持ちやすい。

 

ここまでは復習だ。

 

そして今、「大きな会社」の構造を見ると、面白い仮説が浮かび上がってくる。それは

「天才が上に立つ時代」と「秀才が上に立つ時代」は、歴史的に交互に訪れるということだ。

 

これは図に書くとこうなる。

 

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たとえば、戦後、日本が復興しようとしていたとき、間違いなく、組織のトップは「天才」がリードしていた。何もないところから、新しいことを作る。つまり「創造性」が世の中をリードしていた。一方で、組織は「天才」だけは回らない。それをサポートする「秀才」と、人の気持ちがわかる「普通の人」が絶対に必要だ。だから、組織はこうなる。キレイなピラミッド(天才→秀才→凡人)だ。

 

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だが、時代はたち、天才も歳をとる。スティーブジョブズしかり、天才も「死」には勝てない。そうすると、組織のトップに来るのは構造的に「秀才」である。一方で、若くて才能を持つ「若き天才の卵」は、次々に生まれ、組織に入ってくる。この時、組織の構造は逆転する。(「組織のライフサイクル」と呼べるだろう。)

 

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この時、最も相性の悪い「天才の上に、普通の人がつく」という構造になる。原文で説明したように「天才は普通の人によって殺されること」が多い。そのため、天才は共感の神などに助けてもらえない限り、「不幸な死」を選ばざるを得ない。

 

加えて「事業」にもライフサイクルの死期が訪れる。

創業期を牽引した「コアの事業」はやがて加齢し、消えていく。その時、企業は再度「創造性」を発揮するターンに入る。一般的に使われる言葉だと、破壊的なイノベーションという言葉がわかりやすいだろうか。

だが、問題はその時「誰がトップに座って、どんな感情を抱いているか」である

 

・秀才が直面する「自分の気持ち」にどう向き合うか、という問題

 

具体的には、この時、トップに君臨するのは往々にして「秀才」である。このとき「秀才」が、社内に残存する「天才」をどう扱うか、によって全ての組織の運命は決定する。問題は「感情」にある。具体的には秀才が固有に持つ「尊敬と嫉妬が混ざった、自らのアンビバレント(相反する)な気持ち」である。

 

そもそも「アンビバレントな感情」は、人間がもつ感情の中で最も厄介だ。恋愛における「好きだけど、別れられない」と同じように、相反する2つの感情を含む気持ちは、急激に左右に触れるからである。尊敬と嫉妬、愛と憎しみ、ほとんどの厄介な事件は、この「アンビバレント」な気持ちによって生じている。それがつまり

 

 >秀才が天才をどう扱うかによって「大企業の組織の未来」が決定付けられる

 

と感じるようになった背景である。そして今、多くの大企業はこの転換期にある。したがって、大半の大企業にとってこの「秀才の気持ちのコントロール」こそが、組織の発展を決めると言っても過言ではないと感じるのだ。

 

・天才には、この人を逃したら「あと、何年、待たないといけないのだろうか?」と感じさせる迫力がある

 

これまで僕は人生で「この人は天才だなぁ」と思う人と、3.5人会ってきた。一人は友人でもある、スプツニ子さんだが、天才の第一印象というのはこうだ。

 

 ・この人を逃したら「あと、何年、待たないといけないのだろうか?」と感じさせる迫力があること

 

だ。それはつまり「再現性のなさ」に近い。言い換えれば「この人を逃してしまったら、次に同じような人が訪れる未来」がイメージできないのだ。大谷翔平がわかりやすいだろうか。あのクラスの若手が「次にいつ現れるか」わからない。そう思わせる迫力があるのだ。

 

だが、悲しいながら、秀才は違う。

きっとこういう家庭で育ち、こういう勉強・経験をしたら、こうなるのだろうな、という解剖ができる。しかし、天才はそれができない。「なぜこの人が生まれてしまったのか」が分からないのだ。いや、正確にいうと「わかったとしても、再現」できないのだ。つまりチャンスは「何度も訪れない」のだ。

 

天才が離れ始めた組織に、もう一度天才が寄り付くには相当な労力が必要だ。たとえるなら、郊外の廃れ始めた「シャッター街」がわかりやすいだろう。一度、天才が寄り付かなくなった組織には、もう天才を惹きつけることはできない。だからこそ、秀才が「自らの気持ちに向き合い、変革を行うためのチャンス」は1度きりなのだ。(少なくとも数度しかない、のだ)

 

これが、大企業が自らの手で変革できる唯一で最大のタイミングだと感じるのだ。

 

SNSで最も利益を得たのは「普通の人」。SNSマイルドヤンキーの時代がきた

少し前にラジオ番組を収録した。その時、この話をした。すると側にいたディレクターに聞かれた。

 

「あの、凡人……普通の人はどうなるんですか?」と。

 

つまり、ほとんどの人は天才でも、秀才でもない人。つまり「普通の人(凡人)」だ。そして上の議論はその「普通の人」を置き去りにしているという。(本当は共感の神がいるのだが)たしかにその通りだ。だが、実は、今の時代は「普通の人」こそ最も利益を得やすい時代に入りつつあるのも事実だ。つまり「普通の人にこそ優しい時代」が到来した(加えて、僕はその世界が好きだ)。それは、SNSの登場が大きい。

 

SNSと、ヒエラルキー(大企業)の違いはいくつもあるが、ポイントは2つである。

 

①上下関係がないこと
②共感をベースに繋がれること

 

このメリットを最大限享受できるのは、実は「普通の人」である。だから今の時代とは、本質的には

 

「秀才の支配からの、脱出の時代」

 

だと感じるのだ。(続く)

 

※この記事は「凡人が天才を殺すことがある理由」の続編です。

 

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出典:amazonレビューより

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