『週報』北野唯我のブログ

北野唯我のブログ、プロフィール、経歴など。人材領域をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

22歳、32歳、そのときにしか書けないこと。を書いて歳をとりたい。

 

「文章を書きたいんだけど」

 

という相談を受けるようになった。どうやら話を聞くと、動機はさまざまみたいだ。

 

・自分の会社の広報のために

・誰かに伝えたいことがあるから

・もっと自分のことを世の中に知ってほしいから

 

などなどだ。正直な話、僕は自分の文章が特段うまいとは思っていない。とくに、構成(プロット)はひどいし、何より語彙が少ない。それでもこうやって本を書き続けさせていただけているのは、とてもありがたいことだと思う。

 

だから、「僭越ながら」という前提を置きながらも、それでも一応、みんなにシェアできることもある。それが

 

 ・文章を書くとは、結局、「覚悟の問題」なのだということ。

 

どういうことだろうか?

 

伝えたいことを、伝える。それは「覚悟」がいること

 

そもそも伝えたいことがあること。

 

それは明らかに能力のひとつだ。文章がうまくなる素養が1つだけあるとしたら、間違いなく「伝えたいことがある」だ。伝えたいことがあれば、あとは技術の問題で、習得が可能だ。ただ、普通、文章を1つや2つは書けたとしても、たくさん書き続けることは難しい。「そこまで、伝えたいこと」がないからだ。あるいは、「自分の存在証明」にそこまでのエネルギーを使えない。

 

でも、世の中に対して違和感を感じるひとや、自分の価値を信じるひとのなかには、伝えたいことが次から次へと湧いてくる人がいる。それは間違いなく才能の1つだ。

 

だから、「文章を書きたい」という以前に、「伝えたいことがあるか」は、文章を書く際にはとても大事なことだと思う。

 

この半年は、正直なところ、ほとんどプレイベートがないぐらい忙しかった。その理由は、新作の執筆だった。しかも、二冊同時に出る。自分にとっては三冊目・四冊目の単著になる。ただ、今回が一番、悩んだ。それは

 

「いったい、何のために、俺は文章を書くのだろうか?」

 「なぜ本をつくるのか?」

 

という問いだった。まさに、自分が伝えたいことがまだあるのか? という根底への問いかけだった。それでも本は生まれた。その理由は、死生観に基づくものだと思う。

 

切迫感

 

「32歳までにビジネス書のベストセラーを出す。そうでなければ、死んだほうがいいな」

 

それが、正直なところ、28歳ぐらいからずっと感じていたことだった。20歳の頃に気づいたことは、自分はビジネスが好きだ、ということだった。もともと、高校時代に(いわゆる)社会起業家として活動してきた自分が感じたことがあった。それは、ボランティアでは世界は変わらない。ということだった。善意だけで救える世界は限定的だと理解した。

 

そんな僕がビジネスに興味をもつことはある意味で必然だったかもしれない。ただ、その中で憧れたのは「起業家」ではなかった。どちらかというと、作家性を兼ね備えた参謀という感じのひとだった。

 

たとえば、クレイトン・クリステンセンや、ダニエルピンク、三枝匡大前研一といった人物たちだった。陳腐な言い方をすると、「ビジネスインテリ作家」という枠だろうか。世界を構造化する審美眼と、作家性、その上で、文体からも感じる熱いパッション。そんな人間になりたい、と思った。

 

いつしか、その憧れは夢となり、そして、「絶対にこの領域で成果を出したい」という覚悟まで変わった。それが、32歳までにベストセラーを出す、ということだった。

 

なぜ、32歳か? それは、大前研一さんが『企業参謀』という大ベストセラーを出したのが、その年だったからだ。もし、32歳までに本格的なビジネス領域でベストセラーを出せなければ、自分は何の領域でも日本のトップにはなれない。そう思った。

 

これはある意味で敗北からのスタートだったと思う。自分は、絶対に孫正義には勝てない。柳井正にはなれない。起業家としては、日本でTOP5%にも入れないだろう。だったら、僕ができることはなんなのだろうか? それを考えつづけた。

 

それが

 

「働くひとへの応援ソング」を作りたい。

 

ということだった。ビジネスパーソンは日本だけでも6,700万人もいる。そんな彼らを勇気付けられるようなものを作りたい。そう思った。高度にビジネスの世界を理解しながら、ビジネスパーソンに知恵と勇気をシェアできるような作品。それを作りたいんだと思った。読んだ後に、世界の見え方が変わる「理論」がある。そして、「勇気」がでる本。

ビジネスパーソンは、多くの人が大小の悩みを持っている。彼らに知恵と勇気を与えられたとしたら、これ以上に嬉しいことはあるだろうか? 僕が本を書く理由はそこにしかない、と気づいた。

 

22歳、32歳、そのときの「全力」を世の中にぶつけた文章は心を動かす

 

「何をかけばいいのか?」

 

というのは、作家にとって永遠の課題だ。

その中で、おそらく大事なことの1つは

 

「今、この瞬間、この年齢だからこそかける文章を書く」

 

ということだ。これは、ある編集者が言っていた。その編集者は、世界的な経済誌のヘッドクオーターの編集責任者をしているが、彼はこういった。「北野さんは、きっと、死ぬまで、文章を書き続けると思いますよ。今の年齢だからこそかけることを書いて、それを数年後に自分でぶち壊していく。そういう風に生きていくと思います」と。

 

なるほど。そうかもしれない。

でも、これは僕だけではない。きっと、みんながそうなのだ。

 

書くこととは、足跡を残すことだ。今の自分、いまのあなたが感じること。それは、未熟で、完成なんてされていない。でも今を生きるエネルギーや、伝えたいものがあるなら、今のあなたを残すべきなのだ。それは、10年後の自分からしたら笑っちゃうような、些細な話かもしれない。でも、その瞬間に生きた言葉こそが、今の時代を生きるひとたちの「応援ソング」になる。だから、今しか書けないことを書くのだ。

 

知っているだろうか? 完璧な瞬間なんて永遠に来ない。世界の真理を理解するタイミングなんてこない。誰もが認めるほど、あなたが出世してからでは遅い。偉くなったあなたの言葉はたしかに、きっと役に立つだろう。多くの人から尊敬を得られるだろう。だが、必要なのはそれではない。必要なのは今なのだ。今のあなたが感じること、今の自分が信じる言葉、自分が自分を疑わないために、今の瞬間を全力で書ききる必要があるのだ。なぜなら、多くの人にとって、最も応援ソングを必要としているのは隣の誰かではなく、あなた自身だからだ。

 

カードの出し惜しみなんてしない。

 

普段、IT企業の役員として働いていて、思うことがある。それは、あまりに多くのひとが、「カードの出し惜しみ」をすることだ。それは、あるときは、謙遜であり、あるときは、自分を守るための保身でもある。

 

このカードを出して、もし負けたらどうしよう? こんな大事なことをシェアしたら損だな、とか。そういうことだ。でもそれは違う。

 

文章を書くとか、物語を作るとか、新しいことをやるとか、そういうのは、「出し惜しみして勝てるほど、甘くない世界」なのだ。自分が持っている全てのことを、毎回毎回、1000%出し切る。そうやって紡ぎ出された言葉じゃないと心は動かない。絶対に売れない。読者にもバレるからだ。

 

「出し惜しみしない?」

「そんなことしたら、枯れちゃうじゃないか」

 

と思うかもしれない。気持ちはわかる。でも、これは断言できる。出し惜しみした言葉など、誰の心は動かせない。誰の心も動かせなければ、新しいチャンスは回ってこない。一方で、覚悟を決めた全力のストレートは、誰かの心を動かせる。それが必ず、あなたのチャンスの幅を広げてくれるかはわからない。だが、1,000%言えるのは、出し惜しみした言葉では、絶対に、永久にチャンスなど回ってこない、ということだ。

 

今、32歳になった。

 

この32歳にしか、書けない、究極の応援ソングが二冊できた。1500円だ。はっきりいって、絶対に、1500円以上の価値はある。これまでの『転職の思考法』『天才を殺す凡人』が完成したときとは違う感覚がある。あの二冊の時は、自分に半信半疑だった。もちろん、全力は出した。価値のある本だと思う。でも、迷いもあった。今回の作品は違う。100%、1500円以上の価値はある、と言い切れる。だから、自信を持ってオススメできる。

 

それぐらい、32歳の自分にとって集大成であり、全く出し惜しみせずに作った本。発売します。『分断を生むエジソン』と『オープネス -職場の空気が、結果を決める』。

 

『分断を生むエジソン』 2019年11月28日発売 (講談社

 

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『分断を生むエジソン』ーかつてほど学歴や社歴が力を持たなくなった時代の「影響力」の正体とは? 

 

『オープネス -職場の空気が結果を決める』 2019年11月28日発売 (ダイヤモンド社

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840万人の従業員データでみえた、「職場の空気」が結果を決める理由。初の本格経営書が発売

 

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