『週報』北野唯我のブログ

北野唯我のブログ、プロフィール、経歴など。人材領域をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

「映画は1.4倍でみます」と言ったら、女の子に死ぬほどドン引きされた話

 

事件が起きた。あれは多分秋だったと思う。全てはこの一言から始まった。

 

「俺、映画、1.4倍速で観るんだよね」

 

隣にいた女の子は、「え?」みたいな驚いた表情を見せた。そしてその2秒後に「は?」みたいな軽蔑するような顔に変わった。なぜなら彼女には「コンテンツ」に対する強い思い入れがあったからだ。具体的には、アーティストの仕事をしていたからだ。彼女は続けた。

 

「え、ありえないんですけど。」

 

「ありえない、よね……、でも見ちゃうんだよね」

 

「……」

 

「……」

 

私は倍速で見るメリットを伝えた。例えば、(1)1.4倍速で見れば、120分の映画が僅か85分で観れること、(2)テンポが早くなり、「眠くならない」こと、(3)速聴効果で、もしかしたら「脳にもいいこと」などを語った。

 

しばらく沈黙が続いた後、彼女はこう続けた。

 

「……それは、彼女と一緒に居てもですか?」

 

「うん、たまに」

 

「……」

 

「……」

 

事件だった。いくつかの思惑が交差し、決して交わることのない2つの直線の存在を感じた。「男と女」、「ロジックと感性」、そして今回の最大のテーマである「メディアとアート」。そして私は次のことを確認した。

 

—   終わった、

 

だが、すぐさまこれは「サンクコストだ」と認識した私は、自分が取るべき、ネクストアクションを確認した。

 

うん、きっと、これは、

 

「書くしかない」

 

論点:映画は本当に「1.4倍速で見ちゃダメ」なのか?

「映画を1.4倍速で見る男」

 

そう聞いて、あなたはどう思うだろうか。もしも、あなたがクリエイター系の仕事につく人だったとしたら、100人中98人は「ありえない」と答えるだろう。なぜかって? それはこうだ。 

 

「作り手(クリエイター)への冒涜だから」

 

わかる。気持ちは。だが、ちょっと待って欲しい。なぜ、映画だけが特別なのだろうか。もしも仮に「受け手は、クリエイターが狙った通りにコンテンツを消費すべき」というのであれば、なぜ映画だけが特別なのだろうか。

 

例えば「本」はどうだろうか? あなたは、本の飛ばし読みをしたことがないだろうか? 途中で頓挫してしまったことはないだろうか。学校の教科書に落書きしたことは? 教科書だって「作り手」が存在する。一体、何が違うのだろう。

 

あるいは、もっというと、「美術館」はどうだろうか。美術館には「このルートで観て欲しい」という推奨ルートが存在するが、自分の観たい作品だけ観たことはないだろうか? YouTubeはどうか。あなたは最初から最後までYouTubeを必ず見るだろうか? それだって「作り手への冒涜」に値しないのだろうか。つまり

 

「映画だけ、特別視する理由はない」と思うのだ。

 

……。

 

と、ここまで聞いて、きっとあなたはこう思うだろう。

 

この人、マジでめんどくさい人だな

 

これはマジで正解だが、こう返したい。それでも映画だけが特別視されているのはおかしい! と。

 

「映画を1.4倍速で見る男」は、サイコパスなのか?

 

そもそも、ありとあらゆる物事には、2つのロジックが共存している。そして、全ての社会的事象は、この2つの「交差の仕方」に支配されていると僕は考えている。

 

・1つは、サプライヤーロジック(供給側の理屈)

・2つは、ユーザーロジック(需要側の理屈)

 

これらは交わることもあるが、交わらないことも多い。極めて卑近な例でいうならば、

 

「俺は、彼女を好きで、付き合いたい(サプライヤー・ロジック)

 しかし、相手はどうでもいいと思っている(ユーザー・ロジック)」

 

前半である「俺は、彼女と付き合いたい」というのは、供給側(あなた)の理屈であり、「サプライヤーロジック」だ。一方で後半の「相手はどうでもいいと思っている」は、受け手の理屈であり、「ユーザーロジック」だ。どちらが優先されるべきか? もちろん、後者(ユーザー側の理屈)だ。

そして、僕が思っているのは、この2つをちゃんと分離して考えられないやつは大体やばい奴だ。サイコパス気質がある。では「作り手の気持ち」がわからない(っぽい)、僕はサイコパスなのだろうか?

 

答えは「ノーだ」。

 

なぜか? 

 

以下の2つをしっかり、理解しているからだ。(多分)

 

サイコパスが知らない「2つのルール」

1、ユーザーロジックと、サプライヤーロジックが、別であることを理解している

2、ユーザーの理屈が(基本は)優先されるべき、と認識している

 

 

逆にいえば、上の2つを理解していない人間は「サイコパス気質」があるから要注意だ。

 

優秀なマーケターは、自分が「作り手」のときと、「消費するとき」で、立場を入れ替えることができる

 

そして映画に対して思うのは受け手がコストを払っている限り、優先されるべきは常に「ユーザー側の理屈」だと思うのだ。だが、ここに落とし穴がある。というのも、コンテンツの難しさは、自分が作り手になり得るがゆえに、「視聴するときまで、制作側の気持ちに寄り添いすぎること」だからだ。

 

そしてこれが、優秀なマーケッターか、単なるサイコパスか、を分けている最大の違いだと思うのだ。

 

サイコパスか、優秀なマーケターを分ける最大の違い

・優秀なマーケターは、自分が「作り手」のときと、「消費するとき」で、立場を入れ替えることができる

サイコパスは、常に「作り手」か「消費する側」のどちらかの立場にしか立てない

 

 

サイコパスは、往々にして「圧倒的な自信」を持っているため、性的にも魅力的なことが多い。一方で優秀なマーケターも「自分の見せ方」が驚異的にうまいため、魅力的な人物に見えることが多い。したがって、両者はしばしば誤認されることが多く、見極めが難しい。だが、そんな悩みも今日で解決だ。見極めるためには、これを聞けばいいことがわかっただろう。

 

「あなたは、映画を1.4倍速で見る人をどう思うか」

 

そのスタンスを問えば一発だ。

 

ユーザーロジックには唯一の弱点がある

 

さて、どうでもいい話を本題に戻して

 

「ユーザーの理屈が、基本、優先されるべき」

 

と聞いてあなたはどう思うだろうか。これは事実だ。だが、サービスを作っている人であればわかると思うが、ユーザーロジックには唯一の弱点がある。それは

 

・ユーザーは、未来の「あるべき姿」は、分からない

 

ということだ。例えば「iPhone」が分かりやすいが、ユーザーインタビューから「iPhone」は生まれない。人間は自分がこれまで見てきたことや、経験したことの延長線上でしか物事を捉えられず、そして、iPhoneは、当時の我々の肉体的感覚の延長線を超えていたからだ。つまり「経験したことがないもの」だったわけだ。

 

したがって、もしも、映画にサプライヤーロジックが優先されるとしたら、それは「未来の姿」を描いているときのみだ。ここでいう「未来」というのは、SF映画とかそういう意味ではなく、「あるべき人間の未来の全体像」を指している。例えるなら「アートとしての映画」である。

 

つまり映画を1.4倍速で観ていいか、という問題は、本質的には

 

 映画とは「アート」なのか「コンテンツ」なのか

 

を実質的に問いかけていたのだ。

 

ここ10年のメディア論はすべて、メディアは「アートなのか」「コンテンツなのか」の論議だった

 

そろそろ終わりにしたい。

 

ここ10年のメディア論議(すなわちDeNAのキュレーション問題や、紙メディアの衰退に対する意見)は、メディアは「コンテンツなのか」「アートなのか」という立場で二分されていたと私は思う。もしも、メディアがすべからくコンテンツであるとすれば、「消費されるかどうか」がすべてであり、DeNAを代表とするキュレーションメディアはやはり最強であった。

 

一方で、メディアがもしも未来の「あるべき姿」を多少なりとも含むべきもの(=アート)であったとすれば、キュレーションメディアはユーザーロジックの域を超えておらず、「メディア」とは呼べなかったものだと思う。

 

ジャーナリズムの本質とは、「時間や対価を払ってでも、有益な情報を得ようとする姿勢」

 

そして、一般的に「キュレーションメディアの是非」は、ジャーナリズム論の文脈で語られることが多いが、私はこれは論点が違うと思っている。ジャーナリズムの本質とは、「時間や対価を払ってでも、有益な情報を得ようとする姿勢」であり、それを失ったのは、メディア側ではなく、むしろユーザー側である。つまりユーザーが「労力を払ってまで有益な情報を得ようとしなくなったこと」こそが、ジャーナリズムを崩壊させえる最大の要因だと思うからだ。

 

反対にいえば、一部のオールドメディアが語る「新興メディアにはジャーナリズムがない」という一方的な批判は、彼らの単なるサプライヤーロジックを、ユーザー側に押し付けようしている行為だと思うのだ。その意味で「サイコパス的な考え方」とすら言える。

 

何が言いたいか?

 

一言でいうと

 

「映画1.4倍速で見る男」

 

こんなどうでもいい話が、ここまでの話に展開するとは僕も思わなかった、ということだ。

 

「映画を1.4倍速で見る人」

 

あなたは、果たしてどう感じるだろうか?

 

 

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思考を本質に近づけるための、最強の思考法 ーアンカーマンの技術ー

 

 

「会議の場で、どうやって一目置かれる発言をするか」

 

それはビジネスパーソンにとって重要なテーマだ。なぜなら仕事上の印象は「話す時の実力」によって強く決定づけられるからだ。

 

ある著名なコピーライターはこう語った。

 

「伝え方が9割? そんなの絶対嘘。言葉は思考の深さによって決定づけられる」

 

間違いない。どれだけ伝え方が良くても思考が浅ければ、人の心を揺さぶる言葉など生まれない。では問題はこうだ。

 

「いかにして、自分の思考を本質に近づければいいのか?

 しかも誰でもできるような方法で」

 

誰もが憧れる技術。そのためには「アンカーマン」の技術が役に立つ。

 

▼職業:アンカーマン

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僕は普段、二つの顔で仕事をしている。一つは、経営企画の役員。もう一つは「アンカーマン」と呼ばれる職業だ。

アンカーマン? その耳慣れない職業の定義はこうだ。

週刊誌で、取材記者の原稿をもとに、最終的にまとめる人。また、ラジオ・テレビのニュース番組のメーンキャスター。アンカーパーソン。女性の場合はアンカーウーマンともいう。

アンカーマンとは - コトバンク

つまり、メディアの顔として「取材や自分の考察を通じて、最終的なオピニオンをまとめあげる人間」だ。

したがって、アンカーマンは①取材もするし、②編集もするし、③執筆もするし、④しゃべる。その全てが求めらる。

 

アンカーマンに必要な能力]

  • 1.取材力
  • 2.編集力
  • 3.執筆力
  • 4.プレゼン力

 

そして、これまで僕は「アンカーマン」としてメディアを運営しながら、数々の著名人や財界人の方とお話ししてきた。対談記事に関しては、数をこなした分だけ「割とよく読まれる」。

 

たとえば以下は直近で担当したインタビューの記事とpv数である。ウェブメディアは「1万pvいけば、よく読まれた」と言われる中で、これらの記事はその5倍以上を叩き出している。

 

11.6万pv フリークアウト代表 佐藤裕介氏 (17/05)

8.9万pv 元Google米国副社長 村上憲郎氏 前後篇(17/08)

村上憲郎、北野唯我|就活サイト【ONE CAREER】

8.5万pv アスリート為末大氏 前後篇(17/10)

どうして人は「アスリートの言葉」に、耳を傾けるんですか?為末さん。【為末大】|就活サイト【ONE CAREER】

5.2万pv 東大名誉教授 早野龍五氏 前後編 (17/12)

「こんな時代に大学で学ぶ。そこに、意味はあるのでしょうか?早野先生」【早野龍五:特別インタビュー】|就活サイト【ONE CAREER】

5.1万pv 野村総合研究所人事担当 (17/10)

なぜ商社や広告代理店を抜いて、NRIが就活ランキング3位なんですか?|就活サイト【ONE CAREER】

 

スポーツから、ビジネス。学者に大企業の人事……、これだけ多種多様な人物の魅力を引き出すにはコツがある。今回はこの方法論が整理できた。だからシェアしたい。

 

名付けて「思考を本質に近づけるアンカーマンの技術」だ。

 

▼思考には、グーチョキパーのように「相性の良さ」がある

そもそも思考には明らかにレベルがある。冒頭に出てきた言葉「伝え方が9割かどうか」はハッキリ言えば、テーマの深さによる。具体的には、テーマが浅いと「伝え方」の重要度が高まる。反対にテーマが深いと「内容」こそが重要になる。

 

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たとえば「同僚と天気の話をする」「恋人に何かをお願いする」という浅いテーマの場合、間違いなく「伝え方が9割」である。

一方でもっと深いテーマ、たとえば「どう生きるか」「キャリアをどうしていきたか」という深いテーマの場合「内容が大事」なのは間違いない。(これは壮絶な人生を辿った人の言葉は、多少たどたどしくても「深く刺さること」を想像すると分かりやすい)

 

そしてこの「深いテーマ」を話す際に重要な「思考」を深めるには技術がある。これはジャンケンのようなもので、強いと弱いが存在しており、ぐるぐる思考を回すような感覚に近い。

 

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▼定義

1.論理的思考 (ぐー)

”事実”や論理に、注目した思考。どんな時でも使えるぐらい、汎用性が高いが、目的や前提を見失うことがある。


2.そもそも論 (ぱー)

”前提”と長期的な価値に、注目した思考。本質的な価値を見失わない点がメリットだが「具体性」がかけることがある


3.アナロジーシンキング (ちょき)

”認識”や”効果”に、注目した思考。比喩を多用する。実用性が高いが、一部の事実のみを切り取り、ミスリードを起こす可能性がある

 

イメージとしては

「論理的思考(グー)」が強い人は「そもそも論(パー)」を多くぶつけることで、思考を進化させることができる。

一方で「そもそも論(パー)」が強い人は、「アナロジーシンキング(チョキ)」によって、思考を進化されることができる。こういうイメージである。そして思考能力が優れた人物はこの3つを単独で完結することができる。

 

たとえば、以下は、元Google米国副社長の村上憲郎氏と「テスラ(電気自動車)」について話したときだ。二人の会話に注目してほしい。

 

村上:テスラの魅力を理解するには、電電公社の民営化の歴史を理解しないといけない(アナロジー思考)。で、電電公社の民営化の歴史って何なのかというと、「携帯電話とインターネット」なのよ。電話って、1986年の頃(民営化開始)って、みなさんさ、たいてい下駄箱の上に置いていたわけじゃない。(事実)

 

北野:いわゆる、黒電話ですね。(わかりやすい、アナロジーで返す)

 

村上:それが変わったのは携帯電話になってからでしょ。だから、現在進行中の電力システム改革で、携帯電話に相当するものが、蓄電池なんですよ(アナロジー思考)。まあいってみれば電気の使い方を一番変えるのは「蓄電池が各家庭に入ってくる」ということなんだよね。テスラさんはそこが分かっていて、ギガバッテリーのほうがメインでしょ。つまり、『勝負として』自動車もお売りになっているわけですよ。でも駐車しているときは蓄電池でしょ(前提に基づく、そもそも論)、という意識だと思いますよ。

 

北野:つまり、テスラの真の狙いは、すべての家庭にテスラ製の「蓄電池」を設置することだと。(本質的な価値に注目する、そもそも論)

出展:https://www.onecareer.jp/articles/999

 

アンカーマンの役割は、こうやって相手の軸足となる「グーチョキパー」を見つけ出し、あえて一つズラした思考法で意見をぶつけるのである。思考を進化させる方法の1つ目は、この3つの思考法をバランスよく使いこなすことだ。

 

▼インタビューとは、一人では解けない「問い」を二人で解くこと

先日、ある有名な出版社の編集者からこういわれた。

 

「北野さんのインタビュー記事は、インタビュー記事の概念を変えましたよ。それぐらい凄いです」

 

実際はそんなには凄くなくて話し手が凄いのだが、唯一あるとすると「インタビューの定義」によるところが大きい。というのも、アンカーマンにとって一番重要なことは

 

・最強の問いを立てること

 

だからだ。そもそも思考とは「何かの問いに答える手段」である。となると、インタビューを行う意義とは「一人では解けないことを一緒に解くこと」だと定義できる。なぜなら、一人で解ける問題はわざわざインタビューで聞く必要がないからだ。

 

では、その「最強の問いとは何か」というと、大体、それは

 

本来はその人が解くべき問題だが、
まだ解き終わっていない社会の謎

 

である。というのも、ある程度以上の著名人になると、必ず「その人しか答えられない質問」がある。それを探すことがアンカーマンにとってもっとも重要な技術の一つだ。つまり重要なのは以下の二つである。

 

①その人が解くべき社会の謎は何かを定義すること

②思考のグーチョキパーをバランスよくまわすこと

 

たとえば、どういうことか?

 

以前、アスリートの為末大さんにインタビューしたが、その時、僕が一番聞きたかった質問はこれだった。

 

「どうして人はアスリートの言葉に耳を傾けるのか?」

 

ハッキリ言えば、この「問い」は為末さんだからこそ答えられる。いや、答えるに値する。その理由は、①スポーツアスリートとしても活躍していたこと、②「走る哲学者」と呼ばれるほど言語化能力が高いからである。

 

他の例を見てみよう。

 

昔、サイバーエージェントの取締役曽山さんに話を聞いたことがあった。曽山さんは人事界隈ではとても有名な方だが、その際に僕が一番聞きたかった話はこれだ。

 

「じゃあ、曽山さんならどんな就活するんですか?」

 

これは曽山さんだからこそ答えるべき問いである。このケースの場合、「じゃあ」ってのがポイントだ。なぜならこの「じゃあ」には「専門家のあなたなら」という意味が含まれているからだ。

 

このようにアンカーマンは「問い」と「思考のグーチョキパー」を繰り返しながら、思考を深めていくのが仕事のわけだ。 

 

▼論理的思考は陳腐化しつつある

今、世の中は「論理的思考」が陳腐化しつつある。本屋にいけば、山ほどの「論理的思考に関する本」が存在している。それほど多くの人が「論理的思考」について悩み、求められているという証左だろう。

 

だが、反対に言えば、それぐらい論理的思考は「汎用化された」ということだ。周りを見渡しても、論理的に考えられる人なんて山ほどいる。だから、ロジック単体では「対して差別化要因」にならないってことだ。

 

では、どうすればいいのか? どうすれば、会議の場で一目置かれる発言ができるか?

 

それが、もう一つの「思考の軸」を持つことだと最近思うのだ。具体的には自分が「論理的思考」が強ければ、「そもそも論」で考える癖をつけること。自分が「そもそも論」で考える癖が強ければ「アナロジーシンキング」で考える癖をもつこと。これが重要になってきていると感じる。

 

為末大×北野唯我トークイベントします

さて、7月8日(日)にTokyoFM後援で「為末大×北野唯我」のトークイベントします。二人のまさに「思考のじゃんけん」を楽しめる場になると思います。

第三回目となる今回は書籍出版記念も兼ねています。

 

テーマは、人生100年時代のキャリアのつくり方。『勝負の分かれ目』ともいえる年齢にどうキャリアを形成していくべきか、それを一緒に考えるための会です。

 

「100年時代突入。でも深い専門性が身についていない……」
「今の会社を出たいけど、生活水準は落としたくない!」
「特別な才能がなくても、自分の名前で生きていきたい」

 

上記、どれか1つでも当てはまる人に、示唆ある内容でお届けします。第一回満足度9.0、満足率94%超えイベント。

ぜひディスカッションしましょう!

 

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▼書籍が出ます▼

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日本の課題を表す、10・20・35・130問題。ーなぜ、人材領域に人と金が集まってきているかー

 

「日本の課題を3つ挙げよ」

と、聞かれたらあなたはなんと答えるだろうか。

 

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先日、リクルートが1,300億円でグラスドア社を買収した。このニュースは、人材領域で働く人間に衝撃を与えた。国内最強の人材会社は、2012年買収したIndeedに加えて、世界で最強となるための両翼を手にしたからだ。

 

加えて、昨年あたりからリクルートホールディングス投資銀行出身者など、国内でもとびっきり優秀な人材を経営のコアに雇い続けてきている。

 

つまり、今、人材領域、特にHR Techと呼ばれる「人材×テクノロジー」の領域には「人と金」が集まる、大きな流れがあるのだ。

 

では、なぜ「金と人」が流れつつあるのか?

 

その理由はシンプルであり、そこに「日本の課題」が密集しているからである。

この「なにが日本の課題で、どこに人材の伸び代があるのか」という問題はあまりに多く語り尽くされているようにみえる。しかし、その指摘はパラパラと散在し、薄い点としては散在しているが、まだ誰も全体像を語り尽くすには至っていない。

 

▼日本の課題をとらえた、10・20・35・130の問題

 

「日本」というのを、1つの株式会社として捉えた時、そのパフォーマンスはどう決まるのか。

これはいくつかの方法論が存在するが、そもそも「国のパフォーマンス」や「組織のパフォーマンス」というのは、以下の3つの要素で整理すると「わかりやすい」。

 

1.稼働率(100人中、何人が働いているか)
2.配置効率(何人の人が、どの仕事や産業を担当しているか)
3.生産性(一人一人が、どれだけ生産性が高く働いているか) 

 

これはスポーツで例えると、わかりやすい。

たとえば、その国のサッカーチームの強さは、①そもそも、国内でスポーツするすべての人間のうち、何人がサッカーを選ぶか、という「絶対的な人数」にまず大きく左右される。そのうえで②誰をフォワードに置き、誰をディフェンスにおくか、という「配置効率」の問題があり、最後は③そのフォワードが「個人として」どれだけ活躍できるか、という「生産性」の問題に帰着する。

 

このように、ほぼありとあらゆる組織の生産性は、この3つの観点で分析するとわかりやすい。そして今、日本は、3つの領域、それぞれにおいて課題が存在している。

 

それが、10・20・35・130の問題である。

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まず1つ目は「10」という数字だが、これは「実質的な失業率」の数字である。

日本は目に見える形の失業率は2%程度といわれるが、目に見えない「社内失業」の数が500万人程度といわれる。つまり「社内で仕事がない人」だ。この背景には「終身雇用を前提としているため、解雇しづらいこと」が大きく、500万人という数字は8%程度にあたるため、合わせて「10%」程度である。

  

二つ目は「20・35」という数字だが、これは「配置の問題」である。

別の記事で説明したように、そもそも、産業には「一人当たりの付加価値」に大きな差がつく。その差は最大20倍近くあり、加えて、現状の日本では、毎年100万人近い入職者が生産性の極めて低い産業に流れ込んでいる。この100万人というのは、約35%にあたる。この「20倍」と「35%」を取った数字である。

 

最後は、「130」という数字だが、これは「働きがい」に関する問題である。

具体的には、米ギャロップ社によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%(米国の32%)で調査139カ国中132位と最下位クラスにある。この132位の数字からきている。

 

つまり、①就業率、②配置効率、③生産性のそれぞれで、課題が存在しているわけだ。これが、10・20・35・130問題だ。

 

▼この問題に立ち向かう、「テクノロジー」には4つの方向性がある

では、これに対して、我々、人材マーケットは全体として、どう立ち向かおうとしているのか?

 

結論をいうと、4本のテクノロジーの力が働いている。ザッと国内マーケットを見渡すと、一概にHRTechと呼ばれている会社でも、明らかにいくつかの方向性が存在している。僕はその頭文字をとって、METIモデルと呼んでいる。

 

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1つ目は、マッチング(Matching)。

「最適な場所に、最適な人をおくこと」を科学する流れである。Aさんは事業部Bに置いた方がいい、などというイメージだ。これは国内では、ビズリーチや、リクルートなどが主導していると考えられ、事業会社として一番最先端を進んでいるのは、間違いなく、セプテーニグループである。

 

2つ目は、エンゲージメント(Engagement)。

これは、エンゲージメントスコアと呼ばれる「従業員がどれだけ意欲的に仕事や会社にコミットしているか」を定量的に表そうとする流れである。国内では、モチベーションクラウド、Wevox、Geppoなどが展開し、「従業員の状況」を一瞬で把握することができる。

 

3つ目は、インベストメント(Investment)。

これは「従業員のHRデータに基づいて、投資の意思決定を促す流れ」である。たとえば「この会社は従業員のエンゲージメントが高いから、きっと株価が伸びるだろう」という予測を行い、投資することである。国内では、最強の口コミサイトの1つである「Vorkers」がすでに投資家向けに一部のデータを提供しつつある。

 

4つ目は、ツール(Tool)。

これは単純に「これまで紙でやってきたことを、ウェブでやりましょう」という流れである。OpenESと呼ばれる「エントリーシート」をウェブ上で提出できる仕組み、などがわかりやすい。国内にも数多のベンダーが存在している。

 

そして、これら4つの頭文字をとって、僕は「METIモデル」と呼んでいる。(省庁の頭文字と同じで覚えやすいからだ)

 

METIのテクノロジーは何を解決するのか?

では、この4つのテクノロジーは、一体「何の課題」を解決しようとしているのだろうか?

 

それがまさに、上述の課題(10・20・35・130)である。4つのテクノロジーの流れは前述の課題とピタッと一致しているのである。具体的には以下の図の対応関係にある。

 

テーマ

「伸び代」を象徴とする数字

テクノロジーの分類

稼働率

10

インベストメント(I)

ツール(T)

②配置効率

20・35

マッチング(M)

③生産性

130

エンゲージメント(E)

つまり、マッチングのテクノロジーは「配置効率」の問題を担当し 、エンゲージメントは「生産性」、そして、インベストメントは「稼働率」の問題を担当している。こういう構造だ。

 

このうち、一番わかりづらいのは1つ目の「インベストメントと稼働率」の関係だろう。

 

そもそも、なぜ「インベストメント」と「稼働率」がリンクしているのかというと、結局、稼働率とは「企業の配当性向」によってほぼ決定づけられるからである。たとえば、あなたがある企業のオーナーだとしよう。

 

もしあなたが社内の稼働率を上げたければ、社内失業者を見つけ出し、あぶり出し、解雇して、利益を最大化させればいい。一方で、社内の従業員を守ってあげたいと思うのであれば、利益を殺してでも、雇用を守る方向に進めればいい。つまり、インベストメント(金)が一番ダイレクトに解決できる問題は「雇用・稼働率」なのである。

 

その意味で、インベストメントと稼働率は極めて強い関係性をもっており、今のテクノロジーの流れは、この関係性を「可視化する」方向で進んでいるわけだ。これがHR Techを取り巻く「全体感」である。

 

▼エコシステムとして変化に対応するためには「三権分立構造」が必要

しかし、この4本の矢だけでは、実は十分ではない。というのも、常に社会は「失敗」するからである。そもそもだが、世の中を長期的な視点から「良い状態を継続する」ためには、常に三権分立のような構造が必要だ。僕は以下のように整理している。

 

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言い換えれば、この3つを一つの会社で制したものは、どの世界でも覇者になりえる。

 

Amazonがわかりやすい。アマゾンは、AWSAmazon本体として「システム」を提供しつつ、コンテンツとしての「メディア」を持っている。これに加えて、クレジットカードの情報を加えたデータの「研究機関」を保有すれば、たった1社ですべての要素を持つことができる。したがってどんな変化にも対応し続けることができる、こういう構造だ。

 

そして、現状、日本にはこの3つを制しているHRの圧倒的なプレーヤーは存在しない。だからこそ、全体で手を合わせ、同じ方向を向かないといけないわけだ。

 

▼ソリューションとしての、「SHIFT」

 

もちろん、僕らは動き始めている。具体的には「SHIFT」と呼んでいるムーブメントだ。

半年ほど前から、人材領域の中とたくさん会ってきた。いろんなひとの協力を得ながら、少しずつ形になりつつあるこの動きを僕らは「SHIFT」を呼んでいる。この活動の目的は、HR版のWikipediaをつくることである。具体的には、HRに関するすべての事例を、集結させ、それを世の中に解放する流れである。非公開ながら力強いメンバーが集まってきている。

これは7月に第一回のオープンイベントを行いたいと思っている。

 

▼『転職の思考法』

もう一つは、個人の動きである。6/20に『転職の思考法』という本がダイヤモンド社から出る。この本の目的は「自分のマーケットバリューが何によって決まるのか、を明らかにすること。そのうえで、最終的には、人材の流動性を担保することである。上述のようにいくらマッチングの精度が高まったとしても、必ずエラーは起こる。その際に「どうやって自分のキャリアを構築していくのか」というテーマの本になっている。

 

具体的にすでに原稿を読んでくれた人の感想はこうだった。

 

【転職したことある人、読んで欲しい本が出ます】

いずれも「もっと早く出てれば...」と思う書籍。6月に出る「転職の思考法」草案を読みましたが、めちゃくちゃ面白かった。

ノウハウ的な内容が、ストーリーとして追体験できる形式で書かれており、一気に読めます。

転職したことある人はぜひ、手にとってみてください 

以上。

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