『週報』ー思考実験の場。

北野唯我のブログ。人材市場をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

「適職と、天職の違い」で悩む、35歳。

 

 先日、中目黒で30歳前後の人に向けた、トークイベントを行った。会場から見ると、まさに対照的な二人が話しているように見えただろう。


相方の高木は、いかにも「クリエイターっぽい」金髪の男。僕は、いかにも「アナリストっぽい」神経質そうな黒髪。


そんな二人をよく知る人は、僕らを「右脳と左脳」と称した。それぐらい違う。


僕は会場を眺めながら、少なからず何かしらの悩みがあって訪れたであろう20名の参加者に対して、ぼんやりこう感じた。


 — あぁ、やっぱり、キャリアというのは、「恐怖」との戦いなんだなぁ、と。


あなたと、全く同じキャリアを歩む人は誰一人もいない。だから多くの人が相談したいし、議論したいのだと思う。


振り返ってみると、人は「恐怖をどう捉えるか」によって行動パターンがきまっている。そしてこの“行動パターン”は、恋愛でもビジネスでも、(予測可能な範囲の)結果をほとんどコントロールしている。


キャリアというのは、まさにこの「恐怖」との戦いなのだと思う。冷静に考えて、僕らと、全く同じキャリアを歩む人は誰一人もいない。自分と同じ顔に生まれ、同じ歳で結婚し、子どもを産み、同じ仕事を与えられる人などいない。だから多くの人が自分のケースを相談したいし、議論したい。第一回のイベントで、定員20名に対して、280名もの応募があったのは、誰もがこの「恐怖」に立ち向かっている証左なのだと思う。


僕は不幸なのか、幸いなのか、20代で大企業を二回やめているため、その気持ちがとてもよくわかる。恐怖との戦いだった。そして今、振り返ってみてこう感じている


 — 日本のビジネスマンが抱える悩みは、大きく3つに集約される、と


「適職と、天職の違い」で悩む、35歳に伝えたい


先日、大学時代の先輩から久しぶりにメールが届いた。先輩は、この記事を読んだらしい。


 

www.onecareer.jp

 

「仕事を楽しむ方法」について書いたこの文章は、強い反響があり、「3日連続読んで、3回泣きました」という言葉までもらった。20代の、理想と現実の狭間に揺れる、リアルな気持ちを突き刺す文章だったのだと思う。


僕はその頃から“この病”に、名前をつけるとしたら、なんだろうか?をずっと考えていた。そして、どうやら日本のビジネスパーソンの悩みは3種類に分かれることに気づいた。
 

25歳:やりたい業務と、担当している業務とのGAP(やりたいことできない)

30歳:会社のステータスと、自分の実力のGAP(社会的な評価への違和感)

35歳:適職と、天職のGAP(心からワクワクしない)

 


メールをくれた先輩は今、35歳。そんな彼が悩んでいたのは、この3つ目だった。言い換えれば


適職と、天職の違い

 

だった。適職は、自分に合っている仕事。天職は、その人だけに与えられた仕事。両者は少しだけ違う。


天職は「自分のことを表現できている実感」を味わえるか、どうかで判断できる


では、一体、天職とはなんなのだろうか?


これに最も的確に答えた言葉は、元アスリートの為末大さんの言葉だと思う。為末さんは、以前、対談させて頂いたことがある。

 

僕:「天職とは何か」ということをお伺いします。僕は天職を「お金が死ぬほどあってもやりたいこと」と定義していますが、為末さんはいかがでしょうか?


為末:おっしゃることに同意します。もし僕なりの解釈を入れるとしたら、「自分を表現できている」実感があるかどうかですね。会社を始めてから、世の中には溢れるほどやりたいことがある人ばかりじゃないことに気付きました。そんな人たちにとっての幸福な仕事の仕方は「何でか分からないけど、すごく上手にできる」とか「どうしてこんなに人に喜ばれるんだろう?」みたいなところにあると思います。それって、自分を表現できているかどうかなんですよね。 

www.onecareer.jp

 

 

そう、まさに僕が先輩に伝えたかったことは、これだった。適職と、天職はとても似ている。適職は「自分がうまくやれること」であるし、「稼げること」でもある。だが、天職は違う。天職はこれに加えて「自分を表現できている」という強い実感があるのだ。


例えば、ある有名なウェブライターは、自身の執筆業について聞かれたとき、「息を吸うように文章を書いている」と笑顔で語っていた。彼女にとって、書くことはまさに自分を表現できているという実感を感じるものなのだ。


このように、天職は「自分を表現できている」という実感を伴うものなのだと思う。


特別なのは、その仕事ではなく、先輩。あなたなのだと思う


僕が先輩に感じた違和感もまさに、これだった。先輩は大学時代から「つくること」を楽しめる人だった。こういう人は、どこに行っても大丈夫だ。周りといい関係を築けるし、他者と共同し、仕事の本質をまっすぐに進むことができる。彼のような人間は、転職しても活躍できるし、大企業でも、ベンチャーでも楽しむことができる。


だが、この「つくることを楽しめること」は残念ながら、誰もが与えられた才能ではない。努力を前向きに積み上げてきた人にだけ与えられたギフトなのだ。小学、中学、高校、大学と「与えられること」に慣れてきた人たちにとって、「つくること」を楽しむことは容易ではない。だが、先輩はそれができる素養があった。


だから、僕はこう伝えた。

 

 特別なのは、その仕事ではなく、先輩。あなたの方なのだと思います

 

冒頭に書いた通り、人間を支配しているのは「恐怖をどう捉え、行動するか」だ。そして恐怖の正体は大体「よく知らないこと」と「勇気が足りないこと」に起因している。だから僕らは、その背中を押すイベントが必要だと思った。


11月4日(土)、第二回目のトークイベントを行います


11月4日(土)に、第二回のトークイベントをやる。本当はこの記事で募集するつもりだったが、今回も、早くも定員に達したため、もし興味があれば、3回目(←実施するかわかりませんが。。。)にご参加いただければ、と思う。

 

Event Registration第二回:高木新平×北野唯我 トークイベント 11/4(土)15時〜


とにかく、僕はこれから“日本の25歳~35歳が抱える病”を解き明かしたいと思う。