『週報』北野唯我のブログ

北野唯我のブログ、プロフィール、経歴など。人材領域をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

日本にもっと、自由な転職を。「他人に憧れるような会社で働くことは、誰を幸せにするのだろう?」

 

「他人に憧れるような会社で働くことは、幸せに必ずしもつながらない。」

 

最近、テレビやネットのnewsを見て、そう思う機会が増えた。その背景にあるのは

 

「会社で働くことは、誰を幸せにするのか」

 

という本質的な問いを今、日本人全体が突きつけられているように感じるからだ。

 

どういうことだろうか?

 

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▼『退職届』を書いてスーツに忍ばせた、大企業人事の話

 

以前、大企業の人事の方と話したときに、印象的な話があった。

 

その方は、新卒から10年間、ITメガベンチャーで働き、その後、ご家庭の事情で日系の古くからある企業に転職した。彼は言っていた。

 

「転職した当初、仕事が面白くなさすぎて、毎日辞めたいと思っていた」

 

社内で変革しようとしても、多すぎる承認フロー、完全にフレーム化された仕事……新卒で働いていたベンチャーと比べたとき、働き方が肌に合わなかったらしい。そして彼はある朝、筆をとり、『退職届』を書き、スーツの内ポケットに忍ばせて出社した。

 

だが、驚いた。

 

なぜなら、その日から仕事が急激に「面白くなった」からだ。というのも、「いつでも退職してやる」という覚悟をもった途端、社内でも言いたいことが言えるようになり、上司のくだらない付き合いにもNOと言えるようになったからだという。

 

僕は彼の話を聞いたとき、「本質を表している」と感じた。

 

というのも、仕事というのは、「自分はこの場所で絶対に生きないといけない」「自分はここでしか生きていけない」と思った途端、めちゃくちゃ窮屈なものになる。あるいは「自分は外で生きていく価値がないんだ」って思ったら、急激に自分の存在自体を疑問に思ってしまうようになる。

 

でも、反対に「自分はいつでも辞められる」という覚悟が決まれば、仕事に前向きになり、明らかにパフォーマンスもよくなる。何より「自分に小さな嘘をつく回数」はグッと少なくなる。

 

そして、最近、テレビのニュースを見ていて感じたことは同じ構造だったのだ。

 

▼日大のアメフト部の件で感じた、「悲しさ」

 

先日、日本大学のアメフト部のタックル事件があった。僕はあの話を聞いたとき、本質的には上の人事の話と「全く同じ構造だ」と感じた。

 

だって、もし彼が「いつでも自分は、日大のアメフト部なんて辞めてやる!」「その気になったら他の大学のアメフト部にいってやる!」って思えていたとしたら、あんな悲しいことは起きなかったと思うからだ。

 

でも、実際はそんな風には思えなかった。

 

そりゃそうだ。だって、小中高大と部活だけを一生懸命頑張ってきた人にとって、部活って自分の全てだからだ。「自分の全て」であるものを捨てるなんて簡単にはできない。その気持ちも痛いぐらい、よくわかる。だから部外者が「やめちまえ」なんて言っても、それは空虚に終わる。

 

もちろん、「組織は自分の全て」と思うこと自体は、いい側面もある。組織が正しい方向を向いているときはいい。一体感も生まれるだろう。

 

でも、反対に、会社や組織が間違った方向を向いたり、不正を言いだしたとき、そのとき、組織は人を殺しはじめる。中にいる人はNOなんて言えない。だって「会社=自分の全て」だから、自分に対してNOなんて誰も言えない。こうやって組織は人を蝕んでいく。

 

今回のケースはまさにその典型例だったと思う。

 

だから僕は、人材マーケットの人間としてこれまでずっと、若い人や、将来を担う学生さんには、会社はお前じゃないんだよ。自分じゃないんだよ、ってことを一貫して伝えてきたつもりだ。今回書籍を出させていただくことになったが、この本は、この延長線上にある。対象は学生さんではない、全ての働く人に向けた文章だ。むしろ、大人の方が感じるものがあると思う。

 

▼「リアリティ」がある、キャリアデザイン論

 

今回の本を書く上で、一番大事にしたことがある。それは

 

「リアリティがあること」だ。

 

多くの転職に関する本は、一部の「圧倒的な成功者」や「極論」で埋め尽くされている。たとえば、「好きなことだけやれ」とか「とりあえず、独立してみろ」などだ。

 

でも、本当にそうなのだろうか? これは、本当にリアリティがあるのだろうか? 僕にはそうは思えない。だって、自分自身が初めて転職したとき、そんなアドバイスは全然心動かされなかったからだ。

もっと「リアリティのあるアドバイス」が欲しかった。

 

僕が初めて会社を辞めると決めたとき、正直、めちゃくちゃ迷った。頭ではこうすべき! と思っていても、なかなか勇気が出ずに、寝れない日々が続いた。当時付き合っていた彼女にも弱音を吐いて、叱責されたりもした。めちゃくちゃダサい。

 

でも、それが「仕事選びのリアリティ」ではないだろうか?

 

仕事選びって本当は、キラキラしたカッコイイ部分だけではないはずだ。

 

「転職して給与が下がったらどうしよう」

 

「恋人やパートナーは反対するだろうか」

 

「お世話になった上司にどう言うべきか」

 

そんなウジウジした気持ちを、まるっと含んだもののはずだ。だったらその部分まで含んだ「アドバイス」が誰にだって必要なはずだ。

 

▼物語形式で進む、ストーリー

 

『転職の思考法』という本は物語形式で進む。主人公である青野は、「勝負の分かれ目」ともいえる年齢を迎え、どうキャリアを形成していくべきかを真剣に悩んでいる。実際の仕事場で起きうる、上司との衝突、同僚との駆け引き、彼女からの反対など、「リアルな悩み」に生き、悩んで、答えを出していく。

 

つまり、この本は、どこかのスーパースターではなく、僕たちのための本だ。僕が転職をしようとしていたとき、「もっと早く教えてほしかった」「こんな本があればいいのに」というすべての知識を詰め込んだ。まさに「あのとき、本当に読みたかった」リアリティのある本だ。

 

僕は普段、「あいつはAIなんじゃないか?」と同僚に言われるぐらい、どちらかというと論理的な人間だと思う。でも、たまに、自分でもびっくりするぐらい猛烈に感情的になるときがある。自分ではそのタイミングを知っている。それは

 

本来は「人を幸福にするため」に生まれた組織が、

「人を不幸にするため」に使われているのを見たとき

 

だ。だって、そもそも「会社」なんてものは幻想に過ぎず、実存しない。最近お会いした、田端信太郎さんの言葉を借りると「ただの概念」だ。でも、その「概念」が誰かを殺すためのツールになっていたとしたら、そんな腹立たしいことってあるだろうか?

 

そう思うと、猛烈に腹の底から悲しみと怒りに近い感情が湧いてくる。

 

▼組織のリアリティ

 

でも、「組織のリアリティ」も知っている。(自分自身、50人近い組織をマネジメントしているから、よくわかっているつもりだ)

 

たとえば、今から全ての会社が「自由でのびのびになる」なんて、はっきり言って夢物語だ。100年はかかる。自分が生きている間には不可能かもしれない。でも、だとしたら、方法は1つしかないじゃないか。

 

「概念に殺されないために、ちゃんとした防具を僕たち自身が用意すること」

 

そのための防具と、生きるための武器を、この本には全て詰め込んだ。

 

この本のタイトルを決めるとき、いくらかの人から「タイトルを変えたほうがいい」と言われた。その理由は、SNSでのシェアのしにくさにある。

 

『転職の思考法』というタイトルは、SNS上でシェアがしづらい。Facebookなど実名でシェアしたら、上司に「こいつ、転職を考えているのか?」と勘ぐられる可能性があるからだ。そして今の日本には、

 

 「転職する人=裏切り者」

 

と思う大人がいるのも事実だ。転職が悪? 僕は、1000年前の脳みそなんじゃないか?と思う。だって、これは変な話じゃないか。誰だって、自分がどこで誰と働くか、は選べるべきだし、結婚・出産の関係で、どうしても一度レールから外れ、転職せざるを得ない人もたくさんいる。それに、そもそも憲法によって職業選択の自由は認められているし、なにより、皆だって実は「他人の事件なら」「優しい」からだ。

 

人は思っているよりも、優しい面がある。たとえば、電通の過労死問題や日本大学のアメフト部問題のニュースを見たとき、日本中が悲しみ、怒った。でも、それを「自分の会社」や、「自分のこと」だと見逃してしまう。つねに見失うのは「自分の足元」なのだ。

 

▼「誰もが憧れるような会社」で働くことは、誰を幸せにする?

 

僕は新卒で博報堂という広告代理店に入った。第一志望だった。

 

でも、社会人になって3年目の帰りの地下鉄で、なんだか涙が出てきたのを覚えている。「このままずっと、今の会社にいていいのか?」と腹の底では感じていたからだ。そして転職を決めた日、当たり前だが、僕はこう感じた。

 

 ・誰もが憧れるような会社で働くことは、幸せに必ずしもつながらない

 

遅い、猛烈に。

バカだと思う。でも、自分にとってはそれが、ベストのタイミングだったのだ。つまり、誰にとっても「自分のキャリアを考えるべき、ベストのタイミングがある」のだ。

 

今は、二人に一人が「人生で一度は転職する時代」と言われる。ずっと先回しにしてきた「あなたの職業人生の設計」について、これを機会に、しっかり、見つめる機会を持たないだろうか?

 

この本を通じて、少しでもモヤモヤが吹っきれたとしたら、これ以上に著者として幸せなことはありません。

 

ーー——以下は実際に読まれた人の感想です

 

「もしも約1年前にこの本に出会っていたら、私はいま、どんな会社にいたのだろう。ページをめくるたびにこれまで考えもしなかった声が私の中に出てきた」(20代、女性、メーカー)

 

「物語形式だったので、主人公に共感できる描写が多く、“情報を見極める思考の軸”の大切さを、よりリアルに感じ取れた」(30代、男性、マスコミ)

 

「転職を考えている人は必ず読むべき本だと言える。一方で、すでに転職をした人が読むと、後悔するかもしれない。自分の転職が正しかったのか、答え合わせができてしまうからだ。」(30代、男性、弁護士)

 

「まさに同年代がどんどん転職していく中、私って売れる技術はないし、今の部署は楽ちんでお給料もそこそこもらえるし、手放すのは惜しい…けどこの会社に未来はあるのか?と言われたら多分ない…と思って日々生きています。製造業で技術をつけてもニッチすぎて転職に使えなかったり、自社ではいい技術だと思われているけど他社では普通だったりするので、製造業には刺さるのではないかと思いました!」(30代前半、女性、製造業開発)

 

「小説の形式ということに、ぐいぐいと引き込まれました!(中略)手に取る方は、占いを読むような感覚で今の自分に当てはめながら読み進められそうです。」(30代、女性、エンタメ業)

 

「ちょうど1年前、初めての転職を経験した者です。内容、端的に言って最高だと思いました。転職する前に読みたかった…!(中略) あと物語形式なのも、良いですね!昔読んだ「嫌われる勇気」を思い出しました」

(28歳、男、出版→コンサル)

 

「イッキ読みできて楽しかったです。20代は専門性、30代は経験、40代は人脈とありその端的な指針がとても腹落ちしました。」(30代、女性、編集業)

 

「皆さんおっしゃっているように、転職を考えてから読むだけでなく、これから就職する人にもとっても有益な内容だと感じました。図解で視覚的に理解も深まりますし、文字数が少ないのに知識がつまっていて、続きが読みたくなりました。」(30代、男性、製造業)

 

「言うなれば、これは「オトナの自己分析」だ。就活の時に行ったような、付け焼き刃のテクニックではない。ビジネスパーソンとして持つべき、一生モノの思考法を分かりやすく、そして、転職に悩む一人の青年を描くストーリーとしてまとめている。」(30代、男性、出版)

 

 「人生100年時代」と言われる昨今、キャリアの築き方の重要性は高まっている。彼(転職先の会社)を見極める方法と合わせて、年代を問わずに勧められる本だが、できるだけ若いうちに出会った方がいいだろう。30代に入り、転職を考え始めた自分がまさに求めていたコンテンツだったことは言うまでもない」

(30代、男性、出版)

 

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