思考を本質に近づけるための、最強の思考法 ーアンカーマンの技術ー
「会議の場で、どうやって一目置かれる発言をするか」
それはビジネスパーソンにとって重要なテーマだ。なぜなら仕事上の印象は「話す時の実力」によって強く決定づけられるからだ。
ある著名なコピーライターはこう語った。
「伝え方が9割? そんなの絶対嘘。言葉は思考の深さによって決定づけられる」
間違いない。どれだけ伝え方が良くても思考が浅ければ、人の心を揺さぶる言葉など生まれない。では問題はこうだ。
「いかにして、自分の思考を本質に近づければいいのか?
しかも誰でもできるような方法で」
誰もが憧れる技術。そのためには「アンカーマン」の技術が役に立つ。
▼職業:アンカーマン
僕は普段、二つの顔で仕事をしている。一つは、経営企画の役員。もう一つは「アンカーマン」と呼ばれる職業だ。
アンカーマン? その耳慣れない職業の定義はこうだ。
週刊誌で、取材記者の原稿をもとに、最終的にまとめる人。また、ラジオ・テレビのニュース番組のメーンキャスター。アンカーパーソン。女性の場合はアンカーウーマンともいう。
つまり、メディアの顔として「取材や自分の考察を通じて、最終的なオピニオンをまとめあげる人間」だ。
したがって、アンカーマンは①取材もするし、②編集もするし、③執筆もするし、④しゃべる。その全てが求めらる。
[アンカーマンに必要な能力]
- 1.取材力
- 2.編集力
- 3.執筆力
- 4.プレゼン力
そして、これまで僕は「アンカーマン」としてメディアを運営しながら、数々の著名人や財界人の方とお話ししてきた。対談記事に関しては、数をこなした分だけ「割とよく読まれる」。
たとえば以下は直近で担当したインタビューの記事とpv数である。ウェブメディアは「1万pvいけば、よく読まれた」と言われる中で、これらの記事はその5倍以上を叩き出している。
11.6万pv フリークアウト代表 佐藤裕介氏 (17/05)
8.9万pv 元Google米国副社長 村上憲郎氏 前後篇(17/08)
8.5万pv アスリート為末大氏 前後篇(17/10)
どうして人は「アスリートの言葉」に、耳を傾けるんですか?為末さん。【為末大】|就活サイト【ONE CAREER】
5.2万pv 東大名誉教授 早野龍五氏 前後編 (17/12)
「こんな時代に大学で学ぶ。そこに、意味はあるのでしょうか?早野先生」【早野龍五:特別インタビュー】|就活サイト【ONE CAREER】
5.1万pv 野村総合研究所人事担当 (17/10)
スポーツから、ビジネス。学者に大企業の人事……、これだけ多種多様な人物の魅力を引き出すにはコツがある。今回はこの方法論が整理できた。だからシェアしたい。
名付けて「思考を本質に近づけるアンカーマンの技術」だ。
▼思考には、グーチョキパーのように「相性の良さ」がある
そもそも思考には明らかにレベルがある。冒頭に出てきた言葉「伝え方が9割かどうか」はハッキリ言えば、テーマの深さによる。具体的には、テーマが浅いと「伝え方」の重要度が高まる。反対にテーマが深いと「内容」こそが重要になる。
たとえば「同僚と天気の話をする」「恋人に何かをお願いする」という浅いテーマの場合、間違いなく「伝え方が9割」である。
一方でもっと深いテーマ、たとえば「どう生きるか」「キャリアをどうしていきたか」という深いテーマの場合「内容が大事」なのは間違いない。(これは壮絶な人生を辿った人の言葉は、多少たどたどしくても「深く刺さること」を想像すると分かりやすい)
そしてこの「深いテーマ」を話す際に重要な「思考」を深めるには技術がある。これはジャンケンのようなもので、強いと弱いが存在しており、ぐるぐる思考を回すような感覚に近い。
▼定義
1.論理的思考 (ぐー)
”事実”や論理に、注目した思考。どんな時でも使えるぐらい、汎用性が高いが、目的や前提を見失うことがある。
2.そもそも論 (ぱー)”前提”と長期的な価値に、注目した思考。本質的な価値を見失わない点がメリットだが「具体性」がかけることがある
3.アナロジーシンキング (ちょき)”認識”や”効果”に、注目した思考。比喩を多用する。実用性が高いが、一部の事実のみを切り取り、ミスリードを起こす可能性がある
イメージとしては
「論理的思考(グー)」が強い人は「そもそも論(パー)」を多くぶつけることで、思考を進化させることができる。
一方で「そもそも論(パー)」が強い人は、「アナロジーシンキング(チョキ)」によって、思考を進化されることができる。こういうイメージである。そして思考能力が優れた人物はこの3つを単独で完結することができる。
たとえば、以下は、元Google米国副社長の村上憲郎氏と「テスラ(電気自動車)」について話したときだ。二人の会話に注目してほしい。
村上:テスラの魅力を理解するには、電電公社の民営化の歴史を理解しないといけない(アナロジー思考)。で、電電公社の民営化の歴史って何なのかというと、「携帯電話とインターネット」なのよ。電話って、1986年の頃(民営化開始)って、みなさんさ、たいてい下駄箱の上に置いていたわけじゃない。(事実)
北野:いわゆる、黒電話ですね。(わかりやすい、アナロジーで返す)
村上:それが変わったのは携帯電話になってからでしょ。だから、現在進行中の電力システム改革で、携帯電話に相当するものが、蓄電池なんですよ(アナロジー思考)。まあいってみれば電気の使い方を一番変えるのは「蓄電池が各家庭に入ってくる」ということなんだよね。テスラさんはそこが分かっていて、ギガバッテリーのほうがメインでしょ。つまり、『勝負として』自動車もお売りになっているわけですよ。でも駐車しているときは蓄電池でしょ(前提に基づく、そもそも論)、という意識だと思いますよ。
北野:つまり、テスラの真の狙いは、すべての家庭にテスラ製の「蓄電池」を設置することだと。(本質的な価値に注目する、そもそも論)
アンカーマンの役割は、こうやって相手の軸足となる「グーチョキパー」を見つけ出し、あえて一つズラした思考法で意見をぶつけるのである。思考を進化させる方法の1つ目は、この3つの思考法をバランスよく使いこなすことだ。
▼インタビューとは、一人では解けない「問い」を二人で解くこと
先日、ある有名な出版社の編集者からこういわれた。
「北野さんのインタビュー記事は、インタビュー記事の概念を変えましたよ。それぐらい凄いです」
実際はそんなには凄くなくて話し手が凄いのだが、唯一あるとすると「インタビューの定義」によるところが大きい。というのも、アンカーマンにとって一番重要なことは
・最強の問いを立てること
だからだ。そもそも思考とは「何かの問いに答える手段」である。となると、インタビューを行う意義とは「一人では解けないことを一緒に解くこと」だと定義できる。なぜなら、一人で解ける問題はわざわざインタビューで聞く必要がないからだ。
では、その「最強の問いとは何か」というと、大体、それは
本来はその人が解くべき問題だが、
まだ解き終わっていない社会の謎
である。というのも、ある程度以上の著名人になると、必ず「その人しか答えられない質問」がある。それを探すことがアンカーマンにとってもっとも重要な技術の一つだ。つまり重要なのは以下の二つである。
①その人が解くべき社会の謎は何かを定義すること
②思考のグーチョキパーをバランスよくまわすこと
たとえば、どういうことか?
以前、アスリートの為末大さんにインタビューしたが、その時、僕が一番聞きたかった質問はこれだった。
「どうして人はアスリートの言葉に耳を傾けるのか?」
ハッキリ言えば、この「問い」は為末さんだからこそ答えられる。いや、答えるに値する。その理由は、①スポーツアスリートとしても活躍していたこと、②「走る哲学者」と呼ばれるほど言語化能力が高いからである。
他の例を見てみよう。
昔、サイバーエージェントの取締役曽山さんに話を聞いたことがあった。曽山さんは人事界隈ではとても有名な方だが、その際に僕が一番聞きたかった話はこれだ。
「じゃあ、曽山さんならどんな就活するんですか?」
これは曽山さんだからこそ答えるべき問いである。このケースの場合、「じゃあ」ってのがポイントだ。なぜならこの「じゃあ」には「専門家のあなたなら」という意味が含まれているからだ。
このようにアンカーマンは「問い」と「思考のグーチョキパー」を繰り返しながら、思考を深めていくのが仕事のわけだ。
▼論理的思考は陳腐化しつつある
今、世の中は「論理的思考」が陳腐化しつつある。本屋にいけば、山ほどの「論理的思考に関する本」が存在している。それほど多くの人が「論理的思考」について悩み、求められているという証左だろう。
だが、反対に言えば、それぐらい論理的思考は「汎用化された」ということだ。周りを見渡しても、論理的に考えられる人なんて山ほどいる。だから、ロジック単体では「対して差別化要因」にならないってことだ。
では、どうすればいいのか? どうすれば、会議の場で一目置かれる発言ができるか?
それが、もう一つの「思考の軸」を持つことだと最近思うのだ。具体的には自分が「論理的思考」が強ければ、「そもそも論」で考える癖をつけること。自分が「そもそも論」で考える癖が強ければ「アナロジーシンキング」で考える癖をもつこと。これが重要になってきていると感じる。
▼為末大×北野唯我トークイベントします
さて、7月8日(日)にTokyoFM後援で「為末大×北野唯我」のトークイベントします。二人のまさに「思考のじゃんけん」を楽しめる場になると思います。
第三回目となる今回は書籍出版記念も兼ねています。
テーマは、人生100年時代のキャリアのつくり方。『勝負の分かれ目』ともいえる年齢にどうキャリアを形成していくべきか、それを一緒に考えるための会です。
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上記、どれか1つでも当てはまる人に、示唆ある内容でお届けします。第一回満足度9.0、満足率94%超えイベント。
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