『週報』北野唯我のブログ

北野唯我のブログ、プロフィール、経歴など。人材領域をサイエンティフィックに、金融市場のように捉える為の思考実験の場。

卒業するインターンへ、大真面目に「5つの言葉」を贈りたい

 

春になり、うちのチームから、20名近いインターンが卒業する。

 

f:id:yuiga-k:20180329192739j:plain

 

毎日のように顔を合わせていたインターンが卒業するのは、少しだけ寂しい。卒業式への参加を終え、僕は問いかけた。

 

 彼らに言葉を贈るとしたら、なにを選ぶだろうか。

 

言い換えれば、自分が22 歳のときに「あのときは分からなかったけど、本当に大事なアドバイス」はなんだろうか。大真面目に5つある。

 

 

1.「会社名を使わずに、自分の仕事を定義する練習」を、せよ

 

いずれ君が、30歳になると面白い現象が起きる。

 

それは、勉強を一生懸命頑張ってきた人間ほど、「肩書き」でしか自分への自信を持てなくなることだ。でもこれはおかしな話だ。なぜなら、「勉強を頑張ってきた」ということは「何かを積み上げてきた」はずであり、そもそも「実力そのもの」に自信を持っていいはずだからだ。本来なら「肩書き」なんて必要ない。

 

では、なぜだろうか? なぜ「何かを積み上げてきた人ほど、肩書きに頼る」のか。

 

その理由はこうだ

 

「肩書き以外で自分を語る練習」をしてこなかったから

 

だ。もちろん、肩書きは力強い。名刺代わりになるので、(意外と)しょうもない人と話すときほど「肩書き」があったほうが楽だ。だが、これをずっと続けると「本物の自信」を身につけるチャンスを失う。なぜなら、周りが「すごいね!すごいね!」と言ってくれるからだ。

 

だが、君は違うはずだ。積み上げてきたものがあるはずだ。だから、本当の自信を持って欲しい。そのために明日からでもできる、アドバイスはこうだ。

 

・「会社名を使わずに」自分の仕事を定義する練習を、し続けよ

 

1つ目のアドバイスだ。

 

2.「仕事の報酬は仕事」の1メートル先にあるのは「魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間」である

 

「仕事の報酬は仕事」という言葉がある。わかりやすくいうと「仕事を頑張ると、面白い仕事ができるようになる。これが仕事の報酬だよ」ということだ。

 

だが、最近気づいたが、これはハッキリ言って、半分嘘だ。この言葉の1メートル先に真の果実がある。その果実とは

 

 魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間

 

である。人間の本能的な欲求として「自分が魅力的だと感じる人と、一緒にいたい」というのは確実にある。これは生物としてのDNAとして当然だ。だとしたら、仕事ができることの最大のメリットも、これに限りなく近くなるのは必然だ。

 

結局のところ、人生とは「時間のポジション」であるため、「魅力的な人」と過ごす時間は最大化したいし、「不快に思う人」と一緒にいる時間は最小化したい。そして魅力的な人間の要素の一つには「自発的な目標」が含まれていることがほとんどだ。

 

つまり、いずれ君がお金を稼げるようになったとき、これを問いかけて欲しいのだ。

 

 ・魅力的な人間とだけでつくった、部活のような時間を過ごせているか?

 

もしノーであれば君は「お金を稼ぐ」という意味で優秀ではあるかもしれないが、本質的な意味ではまだ「仕事ができる」にはなっていない可能性が高い。2つ目のアドバイスはこうだ。

 

・「仕事の報酬は仕事」の1メートル先にあるのは「魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間」である

 

3.「メディアパワー」だけを信じてはいけない。それは「ジャガイモ」が好きか、「アサイー」が好きか、それだけの違いだ。

 

サラリーマンでも早い人間だと、20~25歳ぐらいで頭角を表す人間がいる。特に、ウェブメディアの発展によって「インタビュー記事」は、そこら中にあふれている。だが、自分がメディアを運営する立場になったからこそ確信することがある。それは

 

 メディアパワーと、実態のパワーは必ずしも一致しない

 

ということだ。言い換えれば、メディアに出ているが大したことない人や、その逆もたくさん存在している。

 

そもそも「短期的に価値のあるものと、長期的に価値のあるもの」は、しばしば逆転する。ROIが高い事業は、すぐに他社に模倣され、ROIが低くなりえる。一方で、ROIが低いが価値のある事業は、長期的に見ると輝くダイヤモンドになりえる。

 

仕事選びも同様だ。

 

誰もが憧れるような会社に入って、それを目的にした人間ほど、10年後は会社の愚痴ばかり語っていることは多い。一方で周りからは「意味わからない」と言われた企業を選んだ人間ほど、10年後は、仕事場でイキイキと働いていることはよくある。一方で最初から最後まで「キラキラしている人」もいる。

 

これは、例えるなら「ジャガイモ」と「アサイー」の違いだ。

 

野菜の「ジャガイモ」は確かに、派手ではないが、だが、人類史上、最も多くの人間を救ってきた。劣悪な土壌でも育ち、エネルギーを与える。その偉大なる価値は賢い人間は皆、知っている。一方で「アサイー」はスーパーフードではあるが、限られた裕福な人間しか幸せにしない。つまり、3つ目のアドバイスはこうだ。

 

・「メディアパワー」だけを信じてはいけない。それは「ジャガイモ」を目指すのか、「アサイー」を目指すのか、それだけの違いだ。焦る必要は全くない

 

4.性欲よりも、もっと重要になりえるものを探す準備を、週末3分でもいいのでしたほうがいい

 

20代前半のオスにとって、性欲は限りなく重要なもので、端的にいうと「モテること」しか考えていない。というか、考えらない。それはそれで素晴らしいことではあるし、生物のDNAとして間違っていないかもしれない。

 

だが、この歳になって驚くことがある。それは20代前半のときは「性欲の権化」だと思っていた友人たちですら、その衰えが1ミリ見え始めるのだ。そしてその中のいくらかの人たちは性欲以外の「熱中できるもの」を失い、さまよい始める。

 

人生は長い、だが、性欲はいずれ落ちる。

 

……格言っぽいことをつぶやいてしまったが、つまり、アドバイスはこうだ。

 

・性欲よりも「もっと重要になりえるもの」を探す準備を、週末3分でいいので今からしたほうがいい。さもなくば「空っぽな40代以降」になりえる。

 

5.大企業を辞めても今の日本だと、絶対に、死なない。辞める勇気をもってほしい

 

最後に、就職活動に成功した人ほど、辛くなった時に、退職に躊躇することが多い。確かに「せっかく頑張って入った会社だし」と思うのは当然だが、振り返って思うが、どう考えても「大企業に合わない人」は存在している。

 

これはもはや、意欲や、頑張りの問題では絶対に解決できない。その人の価値観、生き方、性格、動物としての本能に近い。それを自分のせいだと考えると、悩み、ふさぎ込む。場合によっては自殺することもある。だが、辞めることは、君が思っているよりも実は簡単だし、イージーなことだ(←重要なことなので2回言った)。特に20代までで積み上げてきた人は、間違いなくこの日本社会では生きていける。だとしたら、本質的に気にしているのは「世間からの目」でしかない。

 

だが、「世間からの目」とはかなりあやふやなものだ。それは「オセロ」のように「白黒が急激に変わる」ものでもあるからでもあるが、それ以上に重要な視点がある。

 

それは、そもそも、人間の中で、最も思慮が浅い、愚かな行為とは

 

 誰かが悩み悩んだ末の意思決定を、他人が、聞く努力をせず、バカにすること

 

であるのは間違いないからだ。だから悩み抜いた末の意思決定を聞く努力もせずにバカにする人間は限りなくバカなのだ。無視しかない。少なくとも僕は、仮に世界がバカにしたとしても、絶対に君の悩んだ末の意思決定を、馬鹿にはしない。だから、ボロボロになり立ち上がることができなくなる前に、辞める勇気を持って欲しいと思う。

 

以上。卒業する、数十名近いのインターンに、送りたい言葉だ。

 

少しでも参考になれば嬉しい。

 

▼最後に

 

 僕が担当役員をしている「ワンキャリア」のメディアは立ち上げ僅か2年で

 

・ライター4名の書籍出版

・数多くの新スター輩出

 

という「強い目利き」にも自信があります。365日、学生インターン、ライターさんは募集しているのでもしご興味があればDMでご連絡ください。

 

ではまた!

 

————

【続編のお知らせ】

ビジネス系としては異例の累計35万PV「凡人が天才を殺すことがある理由」の続編。もしまだ読まれていない方がいればぜひ。

yuiga-k.hatenablog.com

今朝の日経新聞1面に載っております

 

知り合いからのメッセージで目が覚め、日経新聞を買ったところ、

今朝(3/15)の日本経済新聞社の1面に、名前付きで掲載していただいておりました。

 

f:id:yuiga-k:20180315103736j:plain

[論旨]

・世界で勝つためには日本企業の賃上げが必要なのではないか?

・それが出来なければ、グローバル事業を引っ張るリーダーは採用&育成できない

 

いろんな方からコメントも。弊社社員から↓

f:id:yuiga-k:20180315104043p:plain

 

この国の、①労働マーケットの流動性を高め、②給与の弾力性を高めたい

別記事で書いた通り、この国には「労働マーケットの流動性を高め、給与の弾力性を高めること」が必要だと思っています。それは、この国にとってベストだというだけではなく、働く人々にとってもベストなソリューションであると本気で確信しています。。

こうやって日本経済新聞という権威あるメディアが論点に取り上げてくれること自体が素晴らしいことだと感じました。過去に書いた記事もとても面白いので、ぜひ。

 

▼給与の弾力性が、日本経済に与える影響について、まとめました

yuiga-k.hatenablog.com

 

▼人材の流動性が経済と働く人に与える影響について、まとめました

yuiga-k.hatenablog.com

 

 

 

「嫉妬と恐怖」を、マネジメントする力

 

あなたにとって

 

「21歳の自分に伝えたかったこと」は、なんだろうか?

 

最近聞いた話だが、心に響く文章には法則があるらしい。それは「特定の人」に向けて書かれた文章だ。ここまではよく聞く話だが、この「特定の人」とは実は2パターンあるらしい。1つはその名の通り「特定の誰か」。もう一人が、「過去の自分」。

 

となると、文章というのは面白い。なぜなら、誰にとっても「過去の自分」は存在する。であれば「誰でも心に響く文章を書く素養」があるということだ。

 

では、自分にとって、21歳の自分に伝えたかったことはなんだろうかと考える。それは間違いなく

 

「嫉妬と恐怖」をマネジメントする方法、だったと思う。

 

嫉妬と恐怖の気持ちは、基本的には邪魔だ。一方で、負の力をうまくマネジメントすれば、大きな力にもなる。つまり本質的に伝えたいのは「どうやって負のエネルギーをうまくコントロールするか」だ。

 

「嫉妬と恐怖」が組み合わさった環境を、作ってはいけない

 

どんな人の心にも「小さな悪」はある。心の衛生状態がダメだと、悪の心は育ち、いずれ自分を飲み込むようになる。そして、悪が育つ一番の土壌は「嫉妬と恐怖が揃ったとき」だ。

 

f:id:yuiga-k:20180112165856p:plain

 

 

30歳になり、人生を振り返ると、これまで何度も「ダースベーダーになる機会」があったと思う。例えば「恐怖」。小さい話でいうと、地方出身の人間にとって、東京という町は、そのものが怖い。あるいは、若い頃からドメスティックな家庭に育った人間にとって「海外で生活すること」はもっと怖かった。

 

加えて、キャリアにも「恐怖」は存在した。

 

21歳の頃は、当然のように、1つの企業で働き、一生を終えると思っていたが、現実は大きく違った。企業を飛び出し、何者でもない自分に向き合うことが複数回あった。自分の無力さに向き合う作業、それは「恐怖と向き合うこと」以外の何者でもない。少なくとも、レールに乗ってきた人間にとっては。

 

それでも、人が恐怖を乗り越えてこれたのは「確かなもの」を持っているからだ。ある人にとってそれは、勉強や部活を積み上げてきた実績かもしれない。あるいは、家族や恋人かもしれない。だが、自分にとっての「確かなもの」は他の人とは少し違った。

 

端的にいうならばそれは「思考の歴史」だ。若い頃から、孤独と向き合う、長考の歴史だ。人生とは何か、生きるとは何か、それを問い続ける経験は、必ず「確かなもの」につながっている。21歳のあなたに伝えたい、一つ目のアドバイスは、こうだ。

 

「若い頃から孤独と向き合う、長考の歴史は、あなたの確かなものになる」

 

だから信じて欲しい、と。

 

メディアパワーと、実態のパワーは大きく違う

 

正直、今でも人間に関しては、わからないことが多い。

 

特に「嫉妬」という気持ち。そもそも、嫉妬深い、それは罪深いことなのだろうか。嫉妬心は「他人の足を引っ張る原動力」にもなる。一方で「熱望するもの」があるということだ。あるいは、上を目指している、とも解釈できる。

 

若い頃には、嫉妬を根本的にゼロにすることは、現実的には難しいかもしれない。長い教育過程でできた「比較する癖」を治す、それには、人生をもう一度リセットするレベルでやり直しが必要だ。だが、1つだけアドバイスできるとしたらこれだ。

 

 メディアパワーと、実態のパワーは大きく違う

 

自分自身がメディアを運営するようになり、これは確信に変わった。メディアに出る量と、実力は必ずしも比例しない。世の中には「メディアに出ているけど、本当は、すごくない人」も多く存在するし、その反対も多く存在する。だから、メディアのパワーだけを信じてはいけない。それは実態の伴わない嫉妬だからだ。幻想だ。

 

メディアパワーだけを、信じるべきではない、これが言いたいことだ

 

アウトプットとは、「全体の富を増やす行為」

 

ただ、振りかえってみて、あの頃、気づいていなかったこともある。それはインプットとアウトプットの関係だ。具体的には

 

 インプットするだけでは、絶対に逆転しない

 

ということだ。長期に渡って業界でトップを走り続ける人で、インプットだけしている人を今のところ見たことがない。

 

では、アウトプットとは何か、というと、勘違いされがちだが、アウトプットとは「情報を発信すること」ではない。アウトプットとは「全体の富を増やす行為」だ。仮にあなたが何かを発信しつづけても、それが全体の富を増やさない限り、それは実質的にはインプットだ。この世界の謎を見つけ、解き明かし、世の中を改善すること、それがアウトプットと呼ばれる行為なのだ。

 

「全体の富を増やす行為」、これがあなたに必要なプロセスだ。

 

なぜ人は、アスリートの言葉を求めるのか?—ようやくわかった

 

今になり、分析してみると、嫉妬が発生するには、間違いなく条件がある。それは「遠すぎない、距離感」だ。普通の人が、浅田真央を見ても嫉妬しないのは、あまりに遠すぎるからだ。性別も年代もフィールドも才能も違う。だから嫉妬したくても、できない。

 

一方で、同じ会社の同期や、兄弟はあまりに「近すぎる」。だから自分と比較しやすくなる。そして自分に「確かなもの」がないとき、その気持ちは、悪の方向に進む。これが嫉妬だ。

 

最近思うが、アスリートが社会に必要である理由もこの「距離感」ではないかと思うのだ。スポーツは身近でありつつつも、アスリートという「職業」は、自分とは全く世界が違う。ちょうどよい距離感だ。彼らの言葉であれば、素直に聞くことができる。そして目標に向かって進む姿は、多くの人にエネルギーを与える。

 

何が言いたいか?

 

21歳の自分に伝えたかったことはこれだ。「嫉妬と恐怖」が組み合わさった環境を、決して作ってはいけない。そのために必要なのは3つだ。

 

1、孤独と向き合う、長考の歴史は、あなたの確かなものになる

2、全体の富を増やすという意味で「アウトプット」を行え

3、近すぎないライバルを持て

 

▼告知▼  ※締め切りました

さて、1月21日に為末大さんとのトークイベントを行います。

すでに50名以上の方から応募頂いており

 

【残り3席】

 

だけ追加で募集しています。ご興味ある方がいればぜひご応募ください。

 

goo.gl/EjFud8

1/21(日)@東京港